傾聴ボランティアのコツについて

2001年8月11日発行、2010年12月11日一部改訂


訪問ボランティアのお話伺いは、通常の快い会話のコツこそがその秘訣であると言えます。これが一番の会話上手なのです。
しかし、震災ボランティアとしてのお話伺いについて、更にいくつかの点から記述することによって、ヒアリングテクニックを深めることができればと思い、以下にまとめます。

  1. 人の出会いは第一声と第一印象。明るく率直なごあいさつ「こんにちは」は訪問先だけでなく、道で会った方へも行いましょう。
  2. まず自己表示。インターホンで戸口で、「週末ボランティアです」と言って見ましょう。予告チラシを見せるなどして、まず自分が何者でどのような立場からの訪問なのかを全力で伝えます。この時、絶対に早口でなく、ご自分のゆっくり過ぎのお言葉で伝えましょう。
  3. 「こんにちは」「お元気ですか」「暑いですね、寒いですね、いい天気ですね、きれいなお花ですね」などとあいさつした後は、「お話をお伺いしたいのですが、ご都合はいかがですか?」と物理的・精神的の両面から、心配りを見せてください。
  4. どのような形で話すのかを気にされていますので、「戸口や廊下でも構いませんが、お差し支えなければ中で聴かせて頂ければ嬉しいのですが・・・」とお誘いください。ご都合に合わせて聴く場所をセットしますが、「こいつ、とことん聴く気だな」と知らせる方法でもあります。物売りや宗教勧誘ではないことを知ってもらうのと同時に、行政の調査や単なる安否確認の順会ではなく、「あなたに関心がある!」「あなたの話が聴きたい!」という人間的尊厳の原点からの訪問であることを感じて頂ければ嬉しいですね。
  5. お断りになろうとする様子であれば、無理押しせずに、「何かあればご連絡ください。お元気で、失礼します。」と引いてください。
  6. もい、玄関口やお部屋の中に入れて頂けそうな場合は、清潔感を一番大切なものとしてください。他人を家に入れる場合、気にされる方は靴下、衣服、髪などの清潔さを気にされます。持ち物が多ければ、玄関口においてから上がる方がいいです。
  7. さて、お伺いするお話は、震災の話題にこだわる必要はありません。しかし必ず、一度は震災のことを出して話題として誘ってください。被災した場所、被災の状況と被害の程度、家族のこと、被災後の生活のこと、避難所と仮設住宅のこと、今の住宅に落ち着いてからの感想などを入れて、できれば詳しく伺ってください。
  8. ご家族や健康状態のこと、ご自分の生い立ちやお仕事のこと、人生観や社会感など、その方に関することの全てに関心を持って聴いてください。その時絶対に「私はこう思うんですが・・・」とか「私の場合はね・・・」などと口を挟まないでください。とつとつの語りでいいですから、今日はその方のことだけを話題にする日なのです。こちらの考えやこちらの場合を理解させるような負担を、絶対におかけしないでください。それでは訪問されて「しんどい」ですし、「迷惑」ですので。
  9. お話は、つじつまが合わなかったり順序だっていなかったりしても構いません。時間やテーマが飛んでも構いません。「はい、それで、なるほど、おやおや」など、ひたすらお話を促す相槌を打ってください。そして沈黙が訪れた時、それは話の終わりではなくて必ず、次の質的に高い口述への準備の時なのです。沈黙を恐れずに待っていてください。待つ勇気を持つことは、良い聴き手の条件なのです。
  10. お話を聴くときに、メモをとることは重要です。メモが取られれば話す方も話し甲斐があります。またその場でメモを取らなければ、せっかくのお話の正確な聴きとりに支障が出ます。しかし、メモを取られては具合が悪そうな話、批判的な人名や声をひそめた話などには、鉛筆を手放してお伺いしましょう。その場での発言全記述、ようやく記述、記憶しておいて後での記述などは、その場その場の各人の得手不得手と話のリズムで決まります。これという決まりはなく、工夫してやってください。訪問者全員で協力して、支援シートを作成してください。
  11. 別れ際や相槌などで言わない方がいい言葉 どんなお話でも、その方の固有の出来事として受け止めるところに、「あなたのお話に関心がある」というこのお話伺いの原点があり、人間的尊厳の原点があるのです。
  12. 「おじいちゃん」「おばあちゃん」と言わずに、表札の字をよく見て覚え、相手の名前で呼んでみましょう。
  13. お伺いした方の大まかな年齢、男女別、家族構成、話した時間などは忘れがち。支援シートに書き留めてください。ご自分の訪問後の感想なども付け加えると、一層新鮮な記録になります。
  14. 訪問後の終了ミーティングなどで、「こんな風にしたら良かったよ」というコツなどをご披露してください。私たちのお話伺いの積み重ねの財産になります。

トップページに戻る