1、 先ず高齢者見守り現状の認識を!
現在の高齢者見守りの実態が、震災復興を語る上でほぼ満足すべき状態なのか欠けているのかについて現状の評価を先ず行なうべきである。見守りの実態はここ数年の激しい人員削減のため破綻寸前の状態であることを指摘しておきたい。一方で見守りが必要な状況は加速度的に高まっている。例えば今見守りが必要とされている33100人が、いまどのような見守られ状態なのか、その現状評価を先ず一番に行なわねばならない。
例えば今須磨区において、基金委託の「見守りサポーター」は昔の8名からすでに1名に減らされており、8ヶ所の介護支援センターに派遣されている8名の市の「見守り推進委員」とが、被災者も含めた区内の全高齢者見守りをしている現状である。一人で何名の高齢者を受け持ち訪問し、どのくらいの頻度で訪問が出来ているのか。それは満足すべき水準なのか破綻寸前の水準なのか。当事者ではなく外部からの客観評価がなされなければ、10年目の対策は立たないはずである。
全区について、担当者人数、受持ち人数、実見守り時間と回数、についてのデータと、これについての現地評価の公表をすべきである。
2、 「震災対策」を外して「民生委員方式」へ戻すのは大きな誤り
民生委員本来の仕事との連携は、被災者対策の仕事が他で行なわれているときに初めて有効となる。震災対策の特徴は、地域をまたがり部署をまたがり、ケースバイケースの臨機応変の対応である。民生児童委員といわれる地域張り付きの、子供と独居老人を見る民生委員に押しつけて全国に先駆けた高齢者対策を行なっているとは、被災地独特の地縁を失った震災高齢者対策の必要性を認識していない大きな誤りである。
被災高齢者の見守り必要の急増は加速度的である。高齢社会一般の見守り必要性は漸増的である。この違いに対応出来る施策のメリハリが感じられない。
3、 従来の独居高齢者しか視野に無いが、事態は新しく拡大している
見守りの現場では誰もが感じている事であるが、問題の対象は51500名の独居老人だけではない。今は中間独居と言われている「支えあって来た同居者に不調が発生」する新しい高齢者の存在こそ、最も大きな問題である事は現場の常識である。どちらかが倒れる時、問題の多い新参の独居老人が発生する、日々拡大している現実の問題点である。
4、 生活再建本部を無くした失策が根本
被災地高齢者対策の問題点の根源は他の被災地対策と共通のものがある。その失策の根源は「震災復興、生活再建本部」の解散にある。被災地対策を高齢化問題一般の中に混同・解消させようとすることは間違いである。
5、 復興基金の事業期限切れをきっかけとして、抜本対策強化が必要
高齢者見守りをパトロール程度にしか考えない事務担当者は、被災地高齢者問題が沈静化していると考えているのではないだろうか。基金によるサポーター態勢が、現場の必死の努力にもかかわらずすでに無力となって現状を認識出来ないから、基金の期限切れで震災対策の自然死を納得させようとしているのではないだろうか。「いつまでも震災ではない」、「被災者をいつまでも甘やかしてはいけない」などの言葉の暴力が復活する恐れがある。今こそ行政は被災地のコミュニティー維持の独特の困難性と、震災後を支えた被災地お世話役の高齢化に伴う活動低下を真剣・深刻に再認識すべきである。
6、 外部への「発信」よりも内部の「困窮者」への向き合いを
被災地からのお祭り的な「発信」行事の過大な遂行よりも、被災地「困窮者」へ向き合う行政の真剣な姿勢が、この予算案のなかに全く感じられないのは何故であろうか。現場で頑張っている数少ない見守り最前線の声に耳を傾け、外部へよりも内部へ心使う施策こそ行政の根本姿勢でなければならない。
7、 IT化では解決しない
IT化は必要であるけれど、根本的な解決策にはならない。まとめて面倒を見るのではなく、IT化の末端に一人一人の人間の心が繋がっていなければならない。例えば膨大な神戸市の青年人口の中に、IT末端を受け持つ高齢者対策ボランティアを組織する事も可能である。IT化で震災を隠すのではなくIT化で震災の現状認識を広げて行くとの施策とその決意が感じられてしかるべきである。
8、 結論
被災地高齢者見守り体制に、現状調査に基づく抜本的な対策を行うべき事を緊急提言致します。
連絡お問い合わせは電話・ファックス078-795-6499週末ボランティア、東條健司へどうぞ